夫婦は長年一緒に暮らしてきた仲ですからお互いに相手のことをよく分かっていると思いますが、いざ相手配偶者が死亡すると自分の相続税はどうなるのか、考えてみたことはありますか?
配偶者も相続税の課税対象者になりますが、税負担を減らすことができる特例も用意されています。
今回は配偶者の相続税に焦点をあてて見ていきます。
配偶者には特別な税額軽減措置が用意されている
配偶者が承継する相続財産も課税対象になりますから、相続する遺産の多寡によって税負担の重さは変わってきます。
ただし、配偶者だけに特別に用意されている税額軽減措置があるので、実際の負担はかなり軽減されることになります。
配偶者の税額軽減措置は、実際に取得した相続財産の合計額が法定相続分以内、または1億6千万円までであれば相続税がかからないという、かなり大胆な優遇措置です。
1億6千万円という数字は相当大きな額ですから、多くのケースで配偶者は実際の相続税を免れることができそうです。
もし取得した財産が当該額を超えてしまったとしても、法定相続分以内であれば同様に相続税はかかりません。
配偶者の法定相続分は、ケース別に以下のようになります。
配偶者のみ・・遺産全額
配偶者と子・・遺産の二分の一
配偶者と直系尊属・・遺産の三分の二
配偶者と兄弟姉妹・・遺産の四分の三
つまり、相続人が配偶者だけのケースでは、どんなに多額の相続財産であっても配偶者は相続税がかからないということになります。
相続人が他にいるケースでも相当の負担減になりますから、これは配偶者だけに許されたかなり特別な優遇策と言って良いでしょう。
配偶者の税額軽減措置の要件は?
相続税にかかる配偶者の税額軽減は、法律上の婚姻をしていればOKで、婚姻期間の長短は関係ありません。
ただし内縁関係にある者は適用にならない点に留意します。
他の社会保障関連では内縁関係者も一定の優遇措置を受けられることがありますが、相続税の税額軽減ではあくまで婚姻届けを提出している、法律上の夫婦に限られます。
仮に配偶者が相続を放棄した場合、相続財産を承継することができませんが、相続税の対象になる生命保険金を受け取れることがあります。
その場合、当該生命保険金にも本税額軽減措置を適用できます。
注意が必要な点として、本税額軽減措置が適用になるのは期限内に分割された財産だけで、相続税の申告期限までに分割がなされなかった財産には適用がありません。
ですので、遺産分割協議が長引くときには注意が必要です。
もし申告期限までに遺産分割が済みそうにない時は、当初の相続税申告の際に特別な手続きを取ることで、申告期限から3年以内に分割が確定すれば適用を受けることができます。
当初の申告の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」の添付が必要になるので、忘れないようにしましょう。
https://www.nta.go.jp/law/sozoku/kaisei/060214/pdf/02/02-30.pdfなお、配偶者の税額軽減措置を適用して相続税を計算した結果、税額が0となる場合は実質の税負担は生じませんが、相続税の申告手続きだけは必要になるので、この点も忘れないでくださいね。
配偶者が全財産を相続したほうがいいの?
配偶者には上記のように大きな減税枠があるので、複数相続人がいるケースは配偶者に相続財産を集中させて家族全体の相続税負担を避けることも可能です。
しかし遺産を承継した配偶者が亡くなり二次相続が発生した際、残された相続人の相続税負担が大きくなる危険もあります。
例えば父親、母親、子の家族を想定した場合に、父が亡くなりその遺産を母親に集中させると、税額軽減によって負担を軽くできます。
その後母親も亡くなると、子は父親と母親の両方の財産を合わせて引き継ぐことになり、税負担も大きくなります。
父死亡の時点で相続財産のいくらかを子に承継させる方が、二次相続を考えた時に税負担が和らぐこともあるので、個別ケースでシミュレーションが必要です。