親しい家族が亡くなり相続が起きると、悲しみに暮れる間もなく葬儀の手配や関係者への周知など諸々の手配に追われることになります。
かなり慌ただしくなるので精神的にも余裕がなくなると思いますが、法律関連の手続きも忘れることはできません。
特に手間のかかる相続税についても手続きに期限があるので、本章では相続税の申告・納付期限について解説していきます。
相続税の申告期限と納付期限
相続税の申告期限(申告書を作成して提出しなければならない期限)は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」となっています。
特別な事情があって相続の発生を知ることができなかったようなケースを想定して、「~知った日の」という表現になっていますが、起算日は被相続人の死亡した日の翌日となるのが普通です。
また相続税の納税が必要な場合、納税期限も上記の申告期限と同じです。
特例等を利用して納税額が0となるようなケースでは申告手続きだけで済みますが、納税が必要なケースでは期限内に納めなければいけません。
相続税は高額になることがあり、相続財産に現預金が少ないなどのケースでは納税資金の確保に苦慮する事案もよく見られます。
ですから納税資金については相当の時期的余裕をもって捻出、確保しておくことが望まれます。
もしどうしても納税資金が用意できない場合、「延納」や「物納」という制度を利用する道もあります。
救済措置その1「延納」とは
相続税は前項でお話しした期限までに、金銭で一括払いにより納付しなければいけません。
どうしても一括払いが難しい時には「延納」として、いわゆる分割払いで納めていくことも可能です。
ただし、どうしても延納が必要であることを税務署に認めてもらい、許可を得たうえでなければ延納制度は利用できません。
納税額が10万円以上であることなどの要件を満たさなければなりませんし、納税が遅れることに対して利子税が余計にかかること、また一定の場合には担保の提供も必要になり、その担保に利用できる財産にも制限や優先順位などが細かく決められていて、利用勝手は決して良いわけではありません。
救済措置その2「物納」とは
期限内の納税が難しい時はまず前項の延納を検討します。
もし延納もどうしても難しい場合に限り、「物納」を考えることが認められます。
こちらもその必要性を税務署が認め、許可を得られたときでなければ利用できません。
物納に利用できる財産はどんなものでもよいわけではなく、非常に細かい決まりがあります。
国側としては、価値のない財産や換価がしにくい財産をもらっても困るので、国側に都合の良い財産しか受け付けてくれません。
また物納に利用できる財産は被相続人が残した相続財産由来のものに限られ、具体的には以下のようなものが利用可能です。
物納財産は優先順位が決まっていて、順位の高い財産が無い時に限り、下位順位の財産の使用が認められます。
第一順位:不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
第二順位:非上場株式等
第三順位:動産
上記の財産はさらに細かい順位関係が生じるものもあります。
また上記に含まれる財産でも、物納に使用できないこともあります。
例えば、不動産でも担保権が設定されていたり、権利関係に争いがある、土地であれば境界がはっきりしない、株式であれば譲渡制限が付いていたり、権利帰属に争いがあるなど、納税用財産として不適格なものは物納財産として認められません。
相続税の申告は準備に時間がかかります
相続発生後は被相続人の財産調査や相続人の確定作業などに時間がかかります。
作業に追われる中で申告及び納税期限の10か月は意外とすぐに到来してしまうので、早め早めの行動を意識し、スピード感を持って対応するようにしてください。