日本の相続ではほとんどのケースで相続財産に土地などの不動産が含まれてきます。
土地も他の相続財産と同じく、相続税評価を行って相続税の課税対象として扱うことになります。
一般に土地は高価値となるので相続税の負担も大きくなりますが、小規模宅地の特例を利用できればかなりお得になります。
本章ではこの特例について解説します。
小規模宅地の特例とはどういうものか?
不動産は高い価値を持ちますから、被相続人が残した不動産を相続すると相続人は大きな相続税負担を背負うことになります。
納税に使える現預金が豊富にあれば良いですが、主な遺産は不動産だけという事例も少なくありません。
そうなると、相続人はせっかく相続したその自宅を売って納税資金をねん出しなければならなくなるかもしれません。
その土地が事業に使用するためのものである場合、事業の継続ができなくなる恐れもあります。
相続税の支払いのために国民が住居を追われたり、事業が消滅して税収が減ることは国としても良いことではありません。
そこで、人が住むために使用する土地や事業に使用する土地等、国民生活に最低限必要と思われる土地で一定の要件を満たすものについては、特別に相続税評価額を下げ、税負担を軽減できるようにしたのが本特例です。
建物については適用がない点と、土地はその種類ごとに適用を受けられる面積と評価の減額割合が異なってくるという点が大きなポイントになります。
次の項では、対象となる土地の種類や限度面積、評価減の割合を見ていきます。
対象となる土地の種類と限度面積および減額割合
①特定居住用宅地等
この種類は被相続人の居住用に使用されていた宅地、あるいは被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住用に使用されていた宅地です。
この種類に該当する宅地は330㎡までを限度に、80%の評価を減額することができます。
例えば1000万円相当の宅地であれば、200万円の宅地として評価することができ、相続税負担を大きく減らせます。
②特定事業用宅地等
こちらは被相続人または被相続人と生計を一にする親族が行う事業用(貸し付け事業以外)に使用されていた宅地です。
400㎡までを限度に、80%の評価減となります。
③特定同族会社事業用宅地等
この種類は、被相続人やその親族が、発行済株式の総数又は出資総額の50%超を有する一定の法人の事業用(貸し付け事業以外)として貸し出されていた宅地です。
400㎡までを限度に80%の評価減となります。
④貸付事業用宅地等
この種類は、被相続人または被相続人の親族が貸付事業用に使用していた宅地や、一定の法人が行う貸し付け事業のために貸し出されていた宅地を指します。
200㎡までを限度に、50%の評価減を受けられます。
貸付事業用に供される性質を持つ宅地は、減額割合が少なくなることがあるという点に着目できます。
適用要件は宅地の種類ごとに異なる
前項では特例の適用を受けられる各種の宅地について、その種類ごとに面積や減額割合を見てきましたが、適用の要件もそれぞれの宅地の種類ごとに違ってきます。
相続発生前の宅地の利用のされ方、相続でその宅地を承継する人物、承継した後の宅地の利用形態、承継者がその宅地に居住する期間や売らずに保有する期間など、複数の要素を組み合わせて考えることになるので、かなり複雑です。
一般の方に覚えておいてもらいたいのは、とにかく「居住用あるいは事業用に用いられていた土地は減額評価できる可能性が高い」ということです。
これを覚えていれば、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることでお得な制度を活用することができます。